~タイ国における医療ツーリズムの現状と課題~ 62歳の誕生日に寄せて

記者:

横須賀 武彦

2014年4月5日

 

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こんにちは。TSGC&TCMICの横須賀です。
2014年3月21日のGID学会沖縄では「タイ国における医療ツーリズムの現状と課題」というお話をさせていただきましたが、いまその時の資料を読み返してみると少々言い足りない部分などがありましたので、62歳の誕生日に加筆修正したものを公開致します。
問題の本質は受け入れ側のタイの医療機関(病院やクリニック)が営利目的のためエージェント(アテンド業者)をフィルタリング(選別)せず誰でも受け入れる体質にあると思います。
またこれを良いことに業務を始める業者は何の準備も法的手続きもせず業務は始めてしまう精神性も問題であると認識しています。
タイに帰国後もインターネット検索したら3つ業者を新たに見つけましたが、会社の住所や社名も明記されておらず、代表者の名前や顔写真もないのも相変わらずです。
いつになったら患者様が安心してタイでの治療が受けられるか?と一層その思いを強くしました。
何らかの法的縛りが必要ではないかと強く思う今日このごろです。

タイ国における医療ツーリズムの現状と課題(アテンド業者としての考察)
Current Status and Issues of Medical Tourism in Thailand (Considerations as a medical agent)
1. 弊社の考える「医療ツーリズム」とは
・医療ツーリズムは決して「医療観光」ではなく、「医療のための海外渡航」という考えで取り組んでいます。GID当事者の中には手術のついでに観光ができると考えている方がいらっしゃいますが、本来は手術を伴う医療行為をするために渡航するものです。
SRS後の観光は手術に伴うリスクや術後ケアをきちんと理解された上で慎重に行うべきものと考えます。
2. タイにおける医療アテンド業界の現状と問題点
・2004年時点では3社程度しかSRSアテンド業を行っていなかったのですが、2008年あたりからFtM当事者がアテンドを個人または法人として始める動きが目立ち始め2013年12月年現在で30以上の業者がタイのSRSアテンド業務を行っていると思われます。
・タイでアテンド業を始めるにあたって個人へのライセンスも特別な資格や条件も存在しないため、誰でも始められる安易なビジネスモデルとなっていて、トラブルの原因の一つとなっています。
アテンド業者側の問題点
・タイ語や英語などの言語能力がほとんどないにもかかわらずアテンド業務をしている業者がいる現実がある。
・患者へ事前に手術のリスクへの説明や術後のケアの情報提供ができてない業者がいる現実がある。
・中止すべき薬や禁忌事項をきちんと調べずに渡航させて手術できない事態を発生させている現実がある。
・業者間でもアテンド業務内容にバラツキがあり、必ず提供しなければならないサービススタンダードが確立していない現状がある。
・キャンセル条件がサイト上に明確に示されていない業者も少なからず存在していてトラブルの一因となっている現実がある。
・お客様の個人情報管理が甘く、ブログなどで容姿などを含む個人特定の情報が漏れている現実がある。
・アテンド業者の一部は年齢も若く知識や社会経験が不足したまま、プロとしての覚悟と責任を持てないまま業務をしている現実がある。(友達サークルの領域を出ていない状態)
・母国語の日本語の言語能力が低く患者の言っていることが正しく理解できないためトラブルの一因となっている現実がある。
・タイでアテンドを含め様々な業務を行うにはタイでお会社設立とビザやワークパミット(労働許可証)取得が必須ですが、これをクリアしていないモグリとも呼べる業者が相当数存在する現実がある。(個人で行うことは100%不法就労)
患者側の問題点
・海外+タイ初めての方が多数を占める現状でタイ国の習慣や文化への正しい理解がないまま渡航される場合がかなりあり、滞在中の不平や不満などの原因となっている現実があります。
・社会経験の少ない若い当事者の方は精神的に弱く、できるだけストレスレスな状態でのタイ滞在が必要なため付き添いなどの同行者などを勧めるべきであると思います。
・手術に伴うリスクや術後ケアをきちんと理解しないまま渡航して手術をうける方がいるため、知っていれば防げる問題が多々発生しています。
・当事者であることや関係グループということのみを拠り所にして、アテンド業者の違法性、スキルや経験などを気にしない(考慮しない)人が存在する現実があります。
受け入れ側病院の問題点
・タイでは日本と違って医療をビジネスと捉えて病院経営をしているという現実がある。
・受け入れ先の医療機関にエージェント(業者)に対する条件が無く個人でも法人でも関係なく、国籍を問わず仲業業者になれる現実があります。(非公式エージェントというのは存在しない、つまり誰でもエージェントになれてしまう現実がある。)
・医療機関と患者との契約書も存在しない場合もあり、何かトラブルがあっても対応が必ずしもが患者本位とはならない現実がある。

SRSを行う場合に考慮すべき手術結果に影響する様々なファクター(要素)
1. 医師の外科的手技能力:
・病院を選択するのではなくどの医師=「執刀医」に施術してもらうか
・最初の手術が一番重要で術後に修正できる部位とできない部位がある。
2. 術式の難易度:
・開腹法と腹腔鏡方とのメリット・デメリットの正しい理解
3. 患者自身の個人的資質(体質):
・薬やホルモン歴、タバコなどの喫煙歴、ケロイド体質など
・回復には個人差が相当ある。
4. アテンド業者のコミュニケーション能力:
・タイ語通訳能力:日常会話程度では話にならない。相手に伝わるタイ語が話せない、ということはもう「通訳」ですらないわけです。
・医療知識がない、ということは肝心な医療系の通訳ができないということですし、病室にいてもただの素人ということです。
・ある物・事象を説明する言語化能力のことになりますが、特に形成手術をする場合大事になってきます。当然ですが、日本語を使って表現・説明できない人が、外国語で表現・説明できるはずはありません。
5. 患者の術後正しい生活や過ごし方:
・日本での良い生活習慣ができている事が望ましい(酒飲や睡眠)
・手術は上手く行ったのに、安静にしておいた方がいい時期に知らず歩きまわれば回復が遅れたりして最悪の場合は壊死を招くことになります。(アテンド業者の対応によって結果が左右される)
6. 問題発生時の対応:
・深夜などでも必ず対応すること仲介者に確約させる。
・病院サイドではなく第三者として患者サイドで交渉できる人格と能力のある仲介者の選択
※「手術は必ずしも成功するとは限りません。」
いろんなアテンド業者がそう言います。これは正しい。しかし、すべてではないのです。
手術は必ずしも成功するとは限らないとはいえ、患者と一緒になって、ただボーっと結果待ちするようなアテンド業者では困ってしまいませんか?
手術の成功・失敗は、何もオペそのものだけではありません。
必ずしも成功するとは限らない繊細な手術だからこそ、一緒に考えてアドバイスできるアテンド業者ならお金を払う価値があり、存在する意味があると思います。

(抜粋参照元:「当事者ブログ GID-memory(http://ameblo.jp/gid-memory/)、参照日:2014年4月5日)「2014年12月13日加筆修正」

2014年04月02日誕生日にて加筆修正したファイルのダウンロード先:「タイ国における医療ツーリズムの現状と課題(アテンド業者としての考察)」

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